では、問題行動を起こさせないようにするにはどうすべきでしょう。解決策は、飼い主の治療です。飼い主の”あきらめ”や”放棄(問題行動を治す意味での)”を気長に治していくことです。
動物取扱責任者が飼い主から問題行動について相談されたとき、現在の飼育環境を検証する基準として”動物福祉のための5つの自由(Five Freedoms for animal welfare)"に講習会では言及していました。
その内容とは、次の通りです。
1.飢えと渇きからの解放(Freeedom from hunger and thirthty)→正しい食事管理と常に新鮮な水が飲める環境を保障すること。
2.不快からの解放(Freedoms from dosconfort)→清潔で心地よい住環境が保障されていること、すなわちトイレなどの清掃が行き届いていること。
3.痛み、怪我、病気からの解放(Freedom form pain, injury and disease)→疾病予防、早期発見、治療の機会が保障されていること、グルーミング、保定などの際に体に異常がないかを飼い主がチェックしているか、予防接種や定期健診をきちんと行っているか。
4.恐怖と絶望からの解放(Freedom form fear and distress)→恐怖や精神的苦痛を与えられない保障、躾の際に叩くなどの身体的苦痛を与える行為はもってのほかですが、それ以外にもペットがストレスを感じる環境を与えないこと。例えば、引っ越しなどでの住環境の変化はストレスとなります。
5.正常な行動を示す自由(Freedom to express normal behaivior)→その動物がもつ生来的行動がとれること。犬ならお散歩が十分できているか、猫なら爪とぎができる環境にあるかなどがあげられます。これらが十分に満たされていない場合、いわゆる問題行動をとる場合が多いようです。
貴方の愛犬・愛猫はいかがですか?普通の愛犬家・愛猫家なら上記の1-3はクリアできていると思いますが、4と5の観点からのチェックを怠らないことです。もう一度これらの観点から普段の生活環境を振り返ってみてください。特に精神的な苦痛、ストレスを与える原因となっているものがないか?、これが重要ですね。
最後に正常行動の逸脱としてあげられる2つの行動の解説を加えておきます。
1.転移行動(displacement behaivior)
葛藤状態の結果として、普段とまったく別の行動パターンを呈すること。例えば、愛犬の散歩中に向こうから苦手な犬(動物)がやってくると、いきなり地面の臭いを嗅ぎ始めるような行動。一種のストレスサインであり、このような緊張状態が長く続いたりすると常同行動(じょうどうこうどう)や常同障害といったより病的な状態に発展するので注意が必要。
2.常同行動(stereotype behavior)
目的がないに見える行動を延々と繰り返すこと。正常な活動が現状の環境ではできずに欲求不満となっている結果、このような行動を繰り返すと言われている。頻度や激しさなど、その程度が病的なほど激しく頻繁になると常同障害と診断される。時々動物園などでトラが檻の中を行ったり来たり、それを延々と繰り返している行動をしていることがありますが、これなどがまさに常同行動、狭い檻の中で本来の活動・運動ができないことからくるストレスに起因するものです。
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