総会でも説明がありましたが、この1年間で川崎本院及び名古屋分院での初診数は4,667件(昨年度比7.2%増)、総診療数(初診+再診数)は19,236件(同7.3%増)、手術数1,564件(同5.4%増)とのことでした。そして、今年11月より東京分院(足立区)が開業する予定です。昨年3月に東証マザーズ市場に上場したこの会社、それでも、まだ知名度が低いのか?、診療数の伸びが一桁となったいます。
今回は、少し趣向を変えて記者の作成した簡易財務諸表を見ながら、会社の現状を検証してみることにしましょう。
まずは、損益計算書(PL)です。比較のため、2年度分を並べて表示しています。
これを見ると、売上は4.7%増。診療数の伸びを若干下回っています。しかし、本業の儲けを示す営業利益は、2億9,400万円で昨年度比20.5%増加しています。原価率は0.2%程度の改善ですから、管理・販売部門の経費削減が利益率向上に寄与していることがわかります。そして、原価率、売上高営業利益率等に大きな変動がないことから、事業内容に目立った変化はないことがわかります。
それにしても、売上、利益ともに2桁以上の伸びが欲しいところです。売上を伸ばす手っ取り早い方法は、診療数を増やすこと。そのためにどのような施策をとっているのか?、これが、総会で確認すべき点となります。
次に、簡易貸借対照表(BS)、こちらも2年分を並べてみました。損益計算書が単年度の業績を示すのに対して、貸借対照表は過去から現在までの会社の歴史が読み取れるものとなります。
これは、一目瞭然。土地等の固定資産が大きく増加、そして借入金も増加しています。借金をして設備投資を行ったことがはっきりと財務諸表に現れています。ここで、一つ疑問が浮かびます。短期借入金(14億7,900万円)、これは1年以内に返済予定の借入金ですが、PLからわかる通り年間の利益は、3億円弱、そして手元現金は8億5,800万円。厳密には、利益=現金収入とはなりませんが、単純に計算すると、来年度の利益を2.5倍(約7億5,000万円程)に伸ばさないと借金が返せなくなります。東京分院が11月開業ということですが、どこの業界も人手不足が言われている昨今、はたして現実に、これだけの利益をが得られるのでしょうか?
メインバンクは横浜銀行ですが、おそらく満期日での(長期借入金への)借り換えか、増資(新株発行による)を考えているのかも知れません。
話が少し変わりますが、今年は新興市場(ジャスダック、マザーズ)に上場する企業の株価がずいぶん上昇しています。同社の株価は・・・一時2,500円近くまで上昇しましたが、現在は2,200円割れ・・・完全にマーケットの潮流に乗り遅れています。1.増資の可能性による(1株あたり)利益の希薄化、2物足りない売上高の伸び率が嫌気されているのかもしれません。
動物病院で唯一の上場企業である同社、言い換えれば株主として直接経営に物申すことができる同社。発展してほしいものです。「本当に短期借入金はかえせるのか?」とは質問しないつもりですが、今後の展開をどう考えているのかを質問してみることにします。
読者コメント