研修では、感染症の特徴、病原体の種類、動物と病原体の関係(健康保菌者など)、免疫機能、そして感染経路などについてひと通り説明がありましたが、やはり怖いのは人畜共通感染症(ズーノーシス)です。(バックナンバー 2015年11月号参照)感染症については、この点にフォーカスしていました。
病原体の感染経路は、①気道感染、②経口感染、③皮膚感染、④胎盤感染、⑤血液感染と言われています。もっとも身近な例は、ペットに咬まれることですね。
咬まれること、咬傷による感染症の代表的なものは、1狂犬病、2重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、3パスツレラ症、4カプノサイトファーガなどです。この中で、最近注意すべき感染例がみられるものが、重症熱性血小板減少症候群SFTS)です(その他はバックナンバーを参照)。
SFTSは、主にマダニが媒介するウィルス性感染症で、6日~2週間の潜伏期間を経て、発熱、下痢、嘔吐、頭痛、などの症状を呈し、中には神経症や下血などの出血症状、重症化して死亡した例もある感染症です。死亡率は、6-30%と言われており、特効薬はなく感染すると対処療法しかありません。
そして最近、報告されているのは、犬・猫からの感染例。昨年、西日本に住む50代の女性が衰弱した野良猫を介抱しようとして咬まれ、SFTSを発症して数日後に死亡、また今年の6月には、徳島県在住の40代男性が、体調を崩した飼い犬を看病して感染、下痢や発熱が1週間以上続いたとの症例が報告されています。この感染症例はレアケースと言われていますが、とにかく①犬や猫に咬まれない、②犬や猫が体調を崩したら、動物病院へ相談・通院する、③咬まれてしまったら、すぐ病院を受診する、ことを心掛けましょう。中国・韓国では、ペットの治療にあたった医師が感染した例も報告されており、国内でも今年の感染者数は74人(9月末現在、昨年は年間60人前後)で過去最多とのことですから。
ところで、「種の障壁」という言葉をご存じですか?これは、「種の異なる生物間では、感染症の伝播は起こりにくい」ことを意味します。種が異なれば、平常体温が異なることが感染症の伝播を防ぐというのですが・・・これも例外があります。結核と赤痢、とくに人の結核菌は最も感染力が強く、猿、さらには爬虫類へも感染すると言われています(また、その逆も)。濃厚な接触を常としていた飼い主からペットのダックスフンドへ感染した実例もあるそうです。
最近は、犬猫以外にも様々な小動物をペットとして飼育している方も増えています。オウムなどの鳥が感染源となるオウム病は有名ですが、他にもハリネズミー>水虫菌、ミドリガメー>非結核性抗酸菌などを保菌しているので注意が必要とのことです。
その他には、米国では猫の狂犬病が多いとのことなので、渡米する際は咬まれないように注意すべきとのことでした。(猫は狂犬病のワクチンがない)
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