では、研修で紹介された消費者生活センターへの相談事例を追加でみてみましょう。
1.インターネットサイトを通じて見つけたブリーダーから、子犬を2匹購入した。ブリーダーが遠方だったので、最寄りの空港で引き渡しを受けた。数日して下痢や咳などの症状が出たので、数日後に一匹を獣医に診てもらったら、カンピロバクターによる感染とケンネルコフとの診断を受けた。1週間後、もう一匹も診てもらった。獣医によるとカンピロバクターは引き渡し前に罹患していたと考えられるとのこと。健康な犬だと説明されて購入したのに、病気だったことを伝えて、支払った代金56万円の半額、28万円の返金を求めたが、治療費は」払うので診断書と領収書を提出して欲しい言う。慰謝料を請求したい。こちらの要望に応じず納得できない。
→まず、この業者へは消費生活センターから即勧告・指導ですね。他の購入希望者へも同様のケースが確認された場合は、停止命令が妥当でしょう。そもそも病気のペットを販売してはいけません。そして、説明不十分、いや不実告知他動愛法上も違反事項満載です。カンピロバクターは人畜共通感染症、糞便に人が触れたら胃腸炎を起こす場合があります。ケンネルコフは、ワクチンを打っていないと発症し、ペットは死に至る場合もあります。治療費の請求はもとより損害賠償請求、家族が感染した場合には慰謝料も請求可能です。但し、金額については、センターではなく弁護士に相談すべきでしょう。
2.6日前、店舗でトイプードルの子犬を30万円で購入した。3日後に引き取りに行くことになっているが、弟に動物アレルギーがあることがわかった。また。住んでいるマンションは、ペットを飼っている人もいるが、許可が必要だった。契約を止めたい。ペットショップは自己都合での解約なので、犬の代金の半額のキャンセル料がかかるという。契約時にキャンセル料の説明はなく不満だ。
→購入者の責任もありますが、やはりペットショップ側の説明不足は問われるべきです。家族のアレルギーなどの飼育環境の確認、これは啓蒙事項としてあげられている例そのものです。事前説明・確認が行われていない点は、指導・勧告の対象となるでしょう。キャンセル料についても半額というのは、著しく高額で消費者が不利、消費者契約法上認められません。但し、相談者の方も常識では考えられない事由で明らかに責任はあります。キャンセル料の説明はなかったので、無料でキャンセルといきたいところですが、常識の範囲内でのキャンセル料(購入金額の1割かそれ以下)を支払い示談としたと推測します。
3.ペットホテルに大型犬を預けた。体重は24キロ。預ける時に首輪とリードを付けていた。料金は、4日分24,800円を支払った。翌日ペットホテルから、預けた犬が死んだとの連絡があった。業者の説明では、「最初は、ケージに入れたところせまそうだったので、ケージの外にリードを縛っておいたが、気が付いたら、首がリードで絞められた状態で死んでいた」という。利用規約では、業者の過失による死亡時には補償金5万円を上限とすると書いてある。5万円を支払い、預かり時の料金から雑費をひいて返金すると言われたが、死んだ犬の代わりとして子犬を購入する費用を払ってほしい。
→心情的には預かった犬を死なすとはもってのほか!許しがたい所業です。業者側は、完全なる善管注意義務違反で、損害賠償請求の対象となります。金額5万円が妥当かどうかについても争点となるはずです。子犬の購入費用を請求するよりも弁護士に相談して、損害賠償請求あるいは慰謝料請求を行い、それでもって子犬を購入する費用にあてるべきです。このケースは消費者相談センターでは、金額面での折り合いはつかないと予想します。
私費者生活センターへの相談では、必ずしも金額的に不満等で満足がいかないケースがあり弁護士に相談したほうが納得がいくケースは多々あります。しかし、相談することによって、事例が積み上げられ、是正勧告や業務改善場合によっては業務停止命令がくだされることもあるでしょう。
記者が推奨できる方法としては、まず「最低限知っておきたい法律知識」をもとにセンターへ相談、センターの仲裁内容に満足がいかなければ弁護士へ相談といった手順でしょうね。但し、弁護士費用は結構高額になるケースもあるので、その点も考慮してどう決着をつけるかを判断するほうがいいでしょう。
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