同社の新規上場は今年4月28日、決算日を過ぎた後でした。従って、総会に参加出来るのは来年の6月からとなります。
これは、岩井証券で条件を指定して作成した日足チャート(ローソク足)ですが、ご覧の通り、初値(1,295円)をつけてから下落、8月19日終値でやっと1,000円手前まで持ち直してきたところです。これは、新規上場株の動きではよくあることですが、上場初日からしばらくは買われるが、その後下落に転じて需給が一巡するまで下げ続け、その後に再度業態や業績が評価されていくという推移をたどっています。Eコマース事業に特化したペットケア販売会社、米国では以前にご紹介したチューイなどが既に上場していますが、日本では初物、初物は買い!、と言われるように公募価格550円の陪以上の初値をつける人気となりました。しかし、その後はご覧の通りです。では、ここからどうなるか?、
まずは直近、8月12日に発表された第1四半期決算までの業績面からみていくことにします。
決算期 売上 経常 純利益(単位 百万円)
20/3 8,131(+1.6%) 22(△60.1%) 15(△67.1%)
21/3 9,455(+16.3%) 112(+394.1%) 71(+366.8%)
22/3 9,650(+2.07%) 152(+35.7%) 105(+47.8%)
(対前年増加率)
23/3 (計画)10,422(+8.2%) 163(+7.2%) 112(6.7%)
第1四半期 2,558(24.5%) 59(36.2%) 39(34.8%)
(第1四半期 進捗率)
売上構成 自社モール70.5% 他社29.5%、自社モールのうち、サブスク45.5%、都度54.5%
サブスク比率は増加、計画比での進捗率も順調と言えます。業績面の評価は悪くないと思います。
次に市場環境ですが、国内ペット関連市場は矢野経済研究所のデータによれば約1.6兆円の市場規模(2020年度)でペットフドーはそのうち8,323億円と推定されています。そしてペットフードは今後5年間では平均成長率7%程度での成長が見込まれています。
さらに同社事業計画より抜粋のこの資料によれば米国との比較ではペットフードEC事業はまだまだ成長余地があると言えるでしょう。またペットヘルスケア商品のEコマース市場規模は約210億円であり、同社の21/3月期におけるシェアは約4割と富士経済は推定しています。また今後も犬猫の高齢化は継続していくでしょうから、療法食や動物用医薬品を取り扱い同社にとっては追い風です。これらの条件からは、よほどの失策を犯さない限り今後も順調な成長が見込まれると言えるでしょう。
最後は、この環境内でシェアを維持・成長していくための同社独自の強みについてです。
ー同社は神奈川県厚木市に物流センターを設置しており自社製品の在庫管理・出荷を自前で担い、配送は外部委託している。また生産委託先のOEM業者からメーカー・卸などを省いて直納しており販売価格を抑えられる。値上げ傾向が顕著である現状では、これらは優位に働くでしょう。ちなみに22年2月末の従業員ですが、社員52名、臨時従業員4名であり、その部門別内訳は物流が5割を占め、残りの5割はビジネス推進(仕入・マーケティング、カスタマサポート等)、システム、管理部門で概ね3等分されるがビジネス推進の割合が高いという人員配置になっているとのことです。
ー主食商品である療法食は他のフードメーカーが容易に参入できるものではなく(参入障壁が高い)、動物病院以外からのペットヘルスケア商品のEコマース事業への参入は多くないのが現状です。また、動物用医薬品を販売するには薬剤師などの有資格者の在籍、農林水産省の認可も必要なことも優位に働きます。
他にも強みとして1)膨大な量の付加価値の高いペットデータを保有していること、2)既に業務の大半をデジタル化しているDXプラットフォームを事業計画ではあげています。ただ、(あくまで記者の調査不足もあることを前提としますが)この先アニコムのように遺伝子データを保有・解析、オーダーメイドの食事療法を安価で提供する企業が出現すればこの優位性は薄れてきます。具体的にこの付加価値をは何か?が今後の展開には重要になってくると考えます。そして、動物医療においても医学は日進月歩、3年先、5年先には現状がすっかり変わってしまっている可能性もゼロではありません。
以上から現状は3年-5年の成長を見越しての投資が適切なように思われます。その後は、動物医療の進歩状況などを鑑みて投資継続か、売却かを検討してみる、そんな投資スタンスでいこうと考えています。しかし現時点では、同社の上場は多いに歓迎すべきというのが本音です。
では、また次号で!
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