昨年は投資には難儀な一年でした。年初に世界的なインフレ、そしてそれを沈静化するための利上げの影響を取り上げましたが、その後にロシアによるウクライナ侵攻もありインフレはさらに激化・長期化することとなりました。
まずは世界の金融の中心、米国のペット関連から振り返っていきます。
このチャートが物語っています。これは、12/30/21の株価を100とした場合の先週末(1/13/23)までの株価推移です(各月末終値で算出)。日経平均、NYダウ、ナスダック、全て2021年末の株価を下回っています。加えて以前にご紹介したチューイ(CHWY:米国フロリダ州に本社をおくペット関連商品のオンライン販売企業)の株価推移を表示しました。
チューイの株価は利上げの影響をもろに受けて2021年度も先行して下げていましたが、昨年度中にさらに下げ加速、一時は昨年末比で6割近く下げました。($58.97:12/30/21、安値$22.22:5/24/22、$43.76:1/13/23)そして、日経、NYダウがほぼ9割まで戻したにもかかわらず戻りは7割程度です。
株式は本来インフレには(お金の価値が目減りするため)強いとされていますが、それはチューイのような振興・成長企業にはあてはまりません。成長企業は収益が不安定(赤字が多い、倒産の可能性もある)なうえ資金を配当より先行投資に振り向けるため無配が多く、債券で運用する方が安全に利回りを得られるためです。
ただ、売りたたかれた成長企業群の中でもペット関連はまだ先の希望があると記者は考えています。上記チャートでハイテク成長企業の指数とされるナスダック、チューイの株価は直近でそれを上回る回復を見せています。ハイテク以外で成長株の一つとして代表的な物をあげると、コロナ渦で一世を風靡した感のあるオンラインフィットネスを提供する会社、ペロトンがあります。同期間のペロトンの株価推移は、$37.19:12/30/21,安値$6.66(10/3/22), $11.63(1/13/23)となっています。
このペロトン、21年度は一時$170を超える株価をつけていましたが、目も当てられない株価下落に見舞われいまだに1/3も戻っていません。安値は半値八掛け二割引という言葉がありますが、これではまさにその二乗倍の下げです。
他の米国のペット関連企業の株価推移がこちらです。ゾエティスはファイザーの動物部門が分社した動物医薬品やワクチン等製造会社、フレッシュペットはペットフードの会社です。両社の株価はチューイほどの戻りはありませんが、一昨年比で6割以上の位置にあります。ソフト関連やペロトンなどに代表される振興企業の株価が半値以下や1/10になっているのと比べてしっかりしています(ちなみに大手マイクロソフトは$339→$239 7割程度の戻り)。ペット関連企業への投資は米国株大波乱の一年であっても傷は浅くすみました。
では、今後どうなるのか?世界最強の米国が景気後退(リセッション)に陥る確率が今年は高い!、と言われています。米国に端を発してリーマンショックを超える金融リセットや世界恐慌が起こるとも。確かに米国は折に触れ景気後退懸念がとりだたされるでしょうが、本格的な世界恐慌突入とまではいかないでしょう。
最近、モルガンスタンレーなどの大手金融機関やマイクロソフト、メタなどの人員整理のニュースが紙面を賑わしています。米国は不況になるといち早く人員整理、悪くなるのも早いが立ち直りも早いのです。利上げ局面はまだしばらく続くでしょうが、消費者物価の上昇は頭打ちの感があり、年後半には安定成長に戻る道筋は見えてくるとみています。
ただ、不安要因がないわけではありません。かつて中国で言われたシャドウバンキング(普通では融資できない案件に簿外で融資する)、米国の債務上限問題(場合によっては米国がデフォルト)など本当に金融リセット、世界恐慌が起こっても不思議ではない要因があるのは事実です。さらには第三次大戦、核戦争勃発という話もありますが、これは起こってしまえば人類滅亡ですからまずないでしょう。しかし、今年も昨年同様に耐える年になりそうです。米国株へ投資するなら長期目線で、最低でも5年先をみて下げたところをコツコツ拾っていく、これでいいと考えています。本当に金融危機が起こっても世界は必ず立ち直りますから。
では、我が日本は?最近は何でも値上げ、日本にもインフレの波は押し寄せてきました。さらには防衛増税?、異次元の少子化対策の財源で今度は消費増税?、これではお先真っ暗の感がありますが、今注目すべきは日銀です。
18日、日銀は今年度の物価見通しを従来の1.9%から3%上昇へと訂正するとともに(実感はとても3%どころではありませんが)、金融緩和縮小を見送りました。昨年末は実質利上げの政策判断修正で市場は大荒れとなりましたが、今回は現状維持で記者も安堵しています。今後は日銀の政策変更次第で世界経済に多大な影響があるかもしれません。機関投資家は、マイナス金利の円を借りて世界中の高金利通貨や商品、株式等に投資しています(円キャリートレード)。この資金は膨大な額であり、日銀が金融政策を間違うと資金の逆流が起き、それこそ世界恐慌の引き金を日本が引くかもしれないと考えているのです。政策変更するなら少しづつリークして市場に徐々に織り込ませる、そうすれば我々は対応策を準備できます。いきなり、しかも悪い方向へ舵取り、これさえなければ壊滅的な打撃はうけないでしょう。ただ、今の状況では日本の将来はじり貧になるかもしれませんが。
そして巷でいわれている台湾有事ですが、これは今年は起こらないと思います。中国の最優先は景気回復です。中東で新たなる紛争勃発で米国が巻き込まれる、大地震で日本が機能不全に、などのアクシデントでもない限り(中共が確実に台湾を占領できる確証が持たない限り)アジアで戦争ということにはならないでしょう。
では、次章から日本のペット関連企業を個別にみていきます。
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