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2014年12月号 vol.1

動物愛護思想の変遷

2014年12月04日 23:15 by K-Tamaki
2014年12月04日 23:15 by K-Tamaki

 

 現代、「動物愛護」は私たちの身近にある重要なテーマの一つとなっています。

最初に、私たちは、この「動物愛護」という思想を動物との関わりの中でいかにして作り上げてきたのかを簡単に見ていくことにします。

 まず、人間と動物とのかかわりは、およそ2万年前、まだ人間が狩猟生活をしていた時代の犬との関わりが最も古いものだと言われています。当時は、全ての事物には神・霊魂が宿ると信じられ、自然界で起きる事象や動物に対して、我々人間は、特別に深い畏敬の念を抱いていました。

この考え方を、「アニミズム(Animism)」といい、世界的中で普遍的な「原始的な宗教の始まり」とされているものです。現代の「動物愛護」とは、かなり趣を異にするものではありますが、初めての動物(自然界の他の出来事も含みますが)と人間の関わりを表現した考え方です。この考えの下では、自分たちが生活の糧として得るすべての動物や植物は、神からの授かりものであり、必要以上に乱獲を行わない、あくまで共存共栄が基本とされているのです。これは、現代でも参考になるものではないでしょうか。

 そして、時は流れ、人間は動物に慈悲の感情を持って接することや動物を支配するために科学する(動物に対する科学的知識を身に着け、コントロールするノウハウとする)ことを行ってきましたが、現代の「動物愛護」に通じる思想が生まれるのは、19世紀を待たねばならなかったのです。

この間に日本では、江戸時代元禄期(1688年-1704年)に、時の将軍徳川綱吉による「生類憐みの令」というものがありますが、これは、結果的に賞金欲しさの告げ口合戦となってしまい、稀代の悪法として有名になってしまいました。日本初の本格的な「動物愛護」の法令とはならず、残念な結果です。もちろん、他にも古代から日本ではいくつもの「殺生禁止令」なる”おふれ”はありましたが、現代の「動物愛護」の法律とはいささか趣を異にするもののようです。

世界で初めて「動物愛護」関連の法令が定められたのは、英国。1822年制定の「動物虐待防止法」、これが「慈悲的動物愛護(Charity)」思想の原点となったものと言われています。

19世紀以前は、時の社会学者、哲学者の言説により、動物たちは感情(喜怒哀楽)を持たない存在であるとされ、各地で動物虐待が横行していました。

その反動として生まれたものが、「動物虐待防止法」であり、「慈悲的動物愛護(Charity)」思想です。動物たちは人間と同じようにあらゆる感情を有している存在であり、その認識の下、動物たちを正しく理解する必要を説き、これが現代の「動物愛護」思想の基礎となったのです。動物に感情がある、現在ではペットと暮らす人々には当たり前に感じることですけど。

 20世紀になり、「生命尊重」思想が確立されます。それに多大な影響を与えた一人は、アルベルト・シュバイツアー博士。20世紀のヒューマニストの一人として有名な彼の思想、「生命への畏敬」は、彼が感じた”動物の痛みへの共感”とも相まって、全ての生命に尊厳を与える現代の動物愛護思想が確立される基礎となったのです。日本の動物愛護法、「動物の保護および管理にかんする法律」もこの思想の影響を受けて、昭和48年に制定されています。その第2条、基本原則において、”「動物は命ある存在であることに鑑み、みだりに殺傷してはならず、人との共生に十分な配慮をしなければならない”旨、謳われているのです。ちなみに、この欧米型の動物愛護の精神、「生命尊重」思想が初めて日本に伝えられてのは明治30年代と言われています。

 そして、現在、もう一つの「動物愛護」の思想ともいえるものが、「動物の権利を主張する動物愛護(アニマルライツ)」です。これは、動物にも適切な権利を与えるべきだと主張する思想のことです。(動物は生存すること自体に対して人間から解放されるべきとの主張。) ベジタリアン、ノーファーグループ(毛皮禁止者)などもこの思想の流れをくむものですが、一部には過激な言動を行うグループもあり、愛護思想というより、パフォーマンス重視の自己顕示欲を満足させるため行動としか思えないものもあります。価値観が多様化した現代で、人に迷惑をかけない限り、それをあえて完全否定はしませんが。

 

以上、標題に関して私なりに学習したことを簡単にまとめてみました。

次章からは、動物愛護相談センター見学記をお届けします。

  

 

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