前号で犬の気持ちを理解するのは、体全体を見ることが大事とお伝えしました。
そして、もう一つ犬の気持ちを知るうえで重要となるのは、ストレスシグナルです。人間もそうですが、誰もストレスになる相手と仲良くしたくないですよね。当然、犬もストレスを与える人間は苦手です。犬にストレスがかかっているか否かを見極め、その原因を取り除く、犬と仲良く暮らすためのヒントがここにもあります。
ストレスシグナルには、1)生理的な反応と2)ストレス下で示す行動があります。
1)生理的なストレス反応の例
硬直、ふるえ、あえぎ、発汗(肉球より)、瞳孔の拡張、よだれ、脱毛、ふけ など。
2)ストレス下での代表的な行動
A)転移行動、転嫁行動、攻撃(咬みつき、ひっかき)、逃走 など、
B)体をかく、あくび、体を振る、まばたき、舌を出す、鼻を舐める など(これらは頻繁にその行動を行う場合、自らストレスを軽減しようとしている)。
では、こんな症状が見られたら・・・どうすべきでしょう。生理的なストレス反応が見られた場合は、軽く体をマッサージする、軽くタッチしてあげる、などを行いながら暫く様子を観察すべきですね。その原因が病気の場合もあるので、すっとその状態が続くようなら獣医さんに相談してください。
ストレス下での行動がみられる場合、生理的なストレス反応の場合と同じくマッサージなども有効ですが、とっておきの方法があります。
相手からの敵意を感じるなどの緊張下に置かれたり、相手に対して警戒心を抱く場合、犬には大きなストレスとなります。その時、犬も人間とのコミュニケーションを円滑にするために、また自分を落ち着かせるためにあるボディランゲージを発している場合があります。この行動こそが、ノルウエー人のTurid Rugaas氏が「カーミングシグナル」と呼び、犬と人間の、または犬同士のコミュニケーションツールとして提唱しているものです。よく、外国映画で(ハリウッド映画のパニックムービーなどで)、「落ち着け(Calm down)」、という字幕(セリフ)を目に(耳に)しますが、この言葉、カームダウン、に由来するようですね。
具体的な例としては、次のようなしぐさ(行動)があげられます。
1)(相手に向け)目を細める、目線を外す、顔をそむける、背中を向ける 弧を描くようにゆっくり近づく など。
2)(自ら)あくびをする、まばたきをする、座る、フセをする、地面の臭いを嗅ぐ、体をぶるぶるっと振るなどの行動(ストレス下でのBの行動)。
これを上手く活用(逆手にとり)人間から犬へ同じようなシグナルを送る、これがとっておきの方法です。つまり、犬との共通の言葉(仕草と言ったほうが正解!?)で語りかけてあげるのです。
例えば、こんな場合に応用してみるとよいでしょう。それは、お散歩中に犬がまったく動かなくなってしまったときです。「おいで」と優しく言っても、リードをひいても、おやつをちらつかせても動かない・・・・どうやら貴方の愛犬には、何らかのストレスがかかっているようです。
こんなとき、「わざとリードをたるませ、目線を外して、背中を向けてしゃがみこみ、手で地面をほじくる真似をする」、人間から犬へカーミングシグナルを発するのです。そうすれば貴方の愛犬は、きっとストレスが軽減され(緊張がほぐれて)動くことができるはずです。
「安心して、緊張しなくていいよ、大丈夫だよ!」と言う意味のカーミングシグナルを愛犬に送ってあげるのです。愛犬がお散歩中に動こうとしなくなってしまったら、ぜひ一度、試してみてください。
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