まずは、このテーマを取り扱った動物取り扱い責任者研修に関する問い合わせということで東京都動物愛護相談センターを訪問、同センターの獣医師に尋ねてみました。
質疑の内容を以下に要約します。
①気になる猫同士の感染についてですが、これは実験室などの狭い空間での研究の結果、感染が疑われる事例があったということ。この記事がネットに出た時に、「それはある種の猫虐待だ!」と炎上したことがあるそうです(記者は本件は全くノーチェックでした)。ただし、この結果は実験室という限られた空間であって一般の飼育環境とは少し事情が異なります。絶対感染しないとは断定出来ませんが、実生活ではそれほど心配することはなさそうです。
②犬猫ともに感染するケースはありますが、ほとんどは無症状でありそれほど神経質になりすぎなくともよいでしょう。犬についてはウィルス暴露のケースが多いのでは??との記者の質問にはPCR検査の性質を鑑みると(既に死滅したウィルスにも反応したり、増幅回数(CT値)によってはウィルス暴露のケースにも反応します)実際そのケースは多いとのことでした。
③当該記事にあるデータはデルタ株までのものであり、オミクロン株へと変異後のものについても尋ねてみましたが、特に気になる情報はなしとのことでした。また、厚労省などの機関からもオミクロン変異後の人畜共通感染症としての注意事項などの通達はなしとのことです。
④追加でサル痘についても尋ねてみました。サル痘(monkeypox)は本来齧歯類(ネズミの仲間)を宿主としている天然痘ウィルスの仲間です。DNAウィルスでありコロナ(RNAウィルス)ほど変異はしません。日本では感染事例も少なく、これも人畜共通感染症としては(もちろん絶対とは言えませんが)それほど警戒する必要はなさそうです。
どうやら猫感染の件もそれほど神経質になりすぎることはなく、記者の取り越し苦労かもしれませんが、オミクロン変異後の情報が全くないのも少し気になります。
オミクロン株が流行し始めた頃、一部の医学論文で「オミクロンは感染経路(侵入経路)をACE2受容体からDPP4受容体へと変更した可能性が高い」とのリポートを読みました。記者は感染後の症状の違いなどからこの指摘は正しいと推測しています。
かつて流行したマーズウィルスはDPP4を通じて感染し、人の上気道でウィルス量を増やすことが知られています。オミクロンもマーズと同じ侵入口を持っているため、肺炎ではなく咽頭痛がその主症状となっている事がその証左であるとその論文では指摘されていたためです。また、DPP4受容体はT細胞などの免疫細胞自体にも存在しているため、後遺症として免疫不全に陥る可能性も指摘されていたのです(これは気になります)。
注)DPP4受容体(ジペプチドペプチターズ4)とは腸管ホルモンであるインクレチンを分解してしまう酵素です。このインクレチンは糖尿病でよく耳にするインシュリンの分泌に関係しており、DPP4はインクレチンの分解促進を行う酵素として知られています。この酵素の働きを阻害することでインシュリンの分泌を促進するDPP4阻害薬が2型糖尿病の患者さんに処方されています。
オミクロンの症状は風邪と似ており、ほとんどの人が軽症ですみます。もはや海外ではそれほど驚異と捉えられてはおりません。が、最近ではケルベロスやらグリフォンやら(ギリシャ神話のオンパレード??)分けのわからない亜種も出てきており、記者はその最新が少ないのが気になっています。もちろん人畜共通感染症の観点からも。
オミクロン変異後も含めたペットへの影響については、アニコムと日本動物高度医療センターへも獣医師としての見解を問い合わせてみました。が、この件については日本動物高度医療センターからは回答にしばらく時間を頂きたい旨の返答がありました(アニコムはまだ返答なし)。こちらは回答を確認次第追ってお届けします。
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