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2023年07月号 vol.1

日本動物高度医療センター質疑応答~飼い主目線から投資家目線へ!?

2023年07月01日 18:51 by K-Tamaki
2023年07月01日 18:51 by K-Tamaki

例年、質疑応答では同センターで働く獣医師さんたちについてや飼い主目線の質問は必ずありました。ところが、今年はそれがありません。記者を除いて、ほとんどの株主が認知度向上のための施策や情報発信に関して質問されていました。せっかくいい業務内容、しかも業績はいいのだからより多くの人に知ってほしい、これ、(投資家の言葉で言い換えると)認知度向上により株価を上げろととれます。

質問内容(要望)を要約すると、①IR(インベスターズリレーション:投資家向けの情報開示)で成長性を示して欲しい、時間のかかる新規動物病院開業より既存の施設を利用してスピード感のある事業展開をして欲しい、②開示情報で中期経営計画を示す、EBITDA(注*)で利益成長をアピールするなど投資家目線の情報開示を心掛けてほしい、③川崎本院と東京病院で自社競合となり収益面ではマイナスになっていないか?、④今年度の広告費予算はいくらか?などです。

*EBITDA(Earning Before Interest Tax Depreciation Amortization):純利益(Earning)に利息(Interest)、税金(Tax), 減価償却費(Depreciation Amortization)を加算したもので設備投資の影響(減価償却)等を除いた当期の正味の利益(現金収支に近い)を表す。また税金や利率、減価償却方法などが各国によって異なっているため、それらの影響を除くことにより国際的な企業の利益水準比較によく使われる。

それぞれ回答は、①医療スタッフのチームワークを大事にしており、作り上げるのに時間がかかる。高品質の医療を提供し続けるためには(早い事業展開を心掛けているが)どうしても時間がかかる。②中期経営計画は策定しているが開示していない。今後はEBITDAも含めて開示を検討していく。③基本的に関東の北エリアを東京病院、南エリアを川崎で受け持つ、そして最も需要の多い東京からはどちらも選べる利便性を考えて開業した。ただ、放射線治療は川崎のみで行っている。④1千万円(少ない?)ということでした。

③の質問をした株主の方は、大阪病院など地方開業のメリットが少ないのでは?とも尋ねていました。これには社長曰く、「狭い業界故の難しさがある。高度医療を提供する動物病院が増えており当社は(1次病院からの)紹介のみで運営していることがプラスマイナス両面がある。つまり地元の動物病院では(近くに開院することを)歓迎してくれるところ、否定的なところもあるのです。お客様へのサービスは品質が勝負であり、今後は医療技術の向上にも努めながらしっかりやっていきたいと考えています。」

昨年度までは記者も含めて、入院中の動画配信サービス、画像診断による遠隔地医療の提供計画など飼い主目線の提案もありましたが、今年はこの通りです。

では、記者の質疑に参りましょう。

記者:プラスサイクル、最近はペットテック(IT利用のペットサービス)が話題になっていますが、当社はその先駆けともいえると思っています。動物好きがこうじて起業、ペット関連会社からの出資を受けてペットテック分野で業績を伸ばしていく新興企業が増えてきていますが、当社でもそのような企業との連携などでペットテック分野での今後の展開はどのように考えていますか?

回答:病院と飼い主さんの関係を大切にして(プラスサイクルが)広がって行くことを期待しています。(ちょっとピント外れの回答で残念!)

記者:BCP(災害時事業継続計画)について伺います。安否確認、緊急連絡網の整備など社内的なことに加えて・・・ペットショップを営む会社では、災害時に地方自治体と物資提供契約を結んだ会社もあります。このような地域貢献の面を含めたBCPについてどうお考えですか?

回答:数年前多摩川の氾濫の影響を受けました。それを教訓に安否確認のための連絡網はもちろん従業員と入院中の動物のための備蓄はしています。また(大震災クラスの災害時には)社員と一般の方に当社の建物(施設)の解放も考えています。この件については地域の人々と話していきたい。

(これは待ち望んだ回答です。大震災クラスの災害時には着の身着のまま犬猫を抱えて逃げなければいけません。近くに物資も備えた頑丈な建物があれば私たち飼い主は大助かりです。これこそ、今流行のESG、環境社会貢献の一環として宣伝すれば投資家も食いつくのでは?)

記者:コンプライアンスについて伺いたい。昨年の増資前に株価は急騰、発表後下落したのですが、まさか情報は漏れていませんよね?社内教育を含めた情報管理と法令遵守の取り組みを教えてください。

 

 いつものチャート、この昨年度の株価の動きを口頭で伝えました。ちなみにこのチャート、過去半年間の絶対値推移(青線は日経平均)です。(増資発表前後の株価推移は明らかにおかしい・・)

 回答:増資に関しては社員は知りません。関連会社へも情報は流れていません。月に一度はインサイダーに関する社内研修、教育を進めています。また全ての社員と関係者との取引は本部長決裁としています。

(模範回答ですが・・・どうでしょう。つい居酒屋で本件について会話、横で誰かが盗み聞き・・なんてことはないですかね??)

 そして、これは余談ですが、先のEBITDA開示の要望を伝えた株主の方ですが、「愛犬トイプードルを治療して頂き感謝したいます。それが理由で株主になりました。社長さん、獣医と経営者を兼務されており大変かと思います。これぐれもお体に気をつけてください。」、このメッセージに(感激のあまり)壇上で涙ぐむ社長。確か以前も「お前が辞めることが一番の業績向上(株価)対策だ!」と言われて涙ぐんでいました。人情味あふれる方に非情な利益至上主義の経営は不向きです。他にもIRなど専門人材を採用しては?との意見もありましたし、今後、株価次第で社長解任(ただの獣医に戻れ)もあるかも知れません。ファンド筋は、誰かに総会で代弁させるという手段もとります。善意の発言を疑いたくはありませんが、ひねくれ者の記者はどうしてもいらぬ想像をしてしまいます。

昨年、この会社は飼い主目線で獣医さんに要望を主張出来る唯一の会社、株価がどうなろうと株主でいると話していた方(獣医さん?)、今年はお見かけしませんでした。今年の出席者はファンド、投資家がほとんどのように感じました。確かに今の経営方針を変えればもっと利益もあがり、投資家の注目を浴びて株価も大化けするかもしれません。が、経営陣刷新でどこかの会社に吸収合併(市場でTOB)なんてこともあり得ないことでは・・いろいろな意味で今後も注目して行きたいと思います。

 

 

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